海外で地デジを観る方法 2023 年版

海外で生活して困ることとしてよく挙がるのが、地デジが観られないことです。昨今 NHK プラスTVer などの見逃し配信アプリと VPN を使えばそこそこ観られるようにはなりましたが、配信されない番組がある、1週間過ぎたら観られない、録画ができない等まだまだ不自由があります。

そこで安定して長期的に使える 2023 年現在の地デジの視聴ソリューションをまとめてみました。

ちなみに録画は不要でアプリの見逃し配信だけ観られればいいよ〜、という人は下記の記事をご覧ください。

1. はじめに

今回取り上げる海外で地デジが観られる方法は、みな下記の条件を満たすものです。

  1. フルセグ
  2. 合法
  3. 運営元・製造元がちゃんとしている
  4. 海外での視聴にペアリング期限等がない
  5. 海外でローカルに録画データがあり、安定して視聴できる

合法かどうかわからない、誰がどこで運営しているのかもわからない日本のテレビ番組を配信するサービスは色々ありますが、そういうのは除外します。また 90 日のペアリング期限があっても構わないのであれば、 2014 年以降の大抵のブルーレイレコーダーが地デジや録画番組のリモート視聴に対応していますが、 90 日ごとにペアリングするのは大変なので除外します。あとワンセグは解像度が低いので除外します。・・ってもうワンセグとか知らない人の方が多い気が・・おや、こんな夜中に誰か来たようだ。

ちなみに家族の自宅に地デジ受信・録画装置を置いて、そのコンテンツを外出先で視聴するのは個人視聴つまり私的使用なのでそもそも合法です。でもリモート視聴が簡単にできずペアリングが必要だったり、 90 日ごとにペアリングの期限が来たりするのは、自主規制というか、電波産業・・や放送サービス高度化推進協・・などの業界団体の呪縛のようです。・・おや、こんな夜中に誰か来たようだ。

2. 用語

今回の記事を含めて、地デジ視聴界隈では次の用語をよく使います。

DLNA はネットワーク内で機器が動画やファイルをやり取りするためのコンテンツ配信規格です。サーバーとクライアントのペアで動作します。サーバーはブルーレイレコーダーや NAS などの録画機器で、クライアントはテレビやスマホなどの再生機器であることが多いです。インテルが規格に参加してますが、ほとんどガラパゴス規格です。
DTCP-IP はビデオカメラやレコーダーが FireWire で動画をセキュアにやり取りする規格だった DTCP を拡張して、ネットワークで動画をセキュアにやり取りする規格です。通常は DLNA と合わせて実装されます。ガラパゴス規格です。
DTCP+ は DTCP-IP を拡張して、外出先でのリモート視聴に対応させたものです。ペアリングの期限はありません。ガラパゴス規格です。

電波産業・・によってチューナーには載せていけないと決まっているそうです。

NexTV-F TR-0001 は B-CAS の載ったTVチューナー搭載機器でリモート視聴を行うための規格です。ブルーレイレコーダーに載ってるリモート視聴はコレです。現在は ARIB TR-B14 になっています。 90 日するとペアリングが切れます。ガラパゴス規格です。

リモート視聴を備えたチューナーを開発/製造/販売するメーカーは「リモート視聴要件」の遵守を放送サービス高度化推進協・・に届け出る必要があるらしいです。

3. HVL-RS

これです。いきなり今日の本題です。

スマホ対応ハイビジョンレコーディングハードディスク
「 RECBOX 」
HVL-RS シリーズ

録画番組の引っ越し可能なRECBOXに新型登場。
アイ・オー、外出先のスマホに録画番組をとばせるHDD

HVL-RS はアイ・オー・データ機器の録画用 NAS なんですが、なんとペアリングをすると、2台の HVS-RS 同士でインターネット経由で録画番組のダビングができるというすごい機能が搭載されています。ペアリングは同じネットワーク内でしなければなりませんが、1度ペアリングをすれば期限はありません。

HVL-RS は DTCP-IP 対応のブルーレイレコーダーや地デジチューナーからの自動ダビングもできるので、つまり海外から録画予約のできるチューナーを持っていれば、

実家の地デジチューナーかブルーレイレコーダー

実家の HVS-RS

海外の自宅の HVS-RS

と録画した番組が自動的に海外に届くことになります。これはすごい!

そして!これはつまり海外の自分の家にローカルな録画データがある、ということになるので、インターネットのスピードや回線状況や NAT に左右されることなく安定して視聴ができるということです。さらに!この HVL-RS は DLNA / DTCP-IP / DTCP+ に対応しているので、 DiXiM Play などを使うことで

  • Fire TV や Chromecast を使って大画面テレビで地デジ視聴
  • スマホを使っての宅内視聴やリモート視聴
  • パソコンでの宅内視聴やリモート視聴

などが可能になります。 Fire TV Stick は安いので、なんなら自宅の各部屋のテレビに付けて地デジが観られるようにできますね。繰り返しになりますが、 HVL-RS はチューナーが無い、つまり B-CAS の呪縛がない、つまり NexTV-F ベースでなく DTCP+ ベースのリモート視聴なので、ペアリングに期限がありません。

昔からテレビ番組録画ソリューションにはピクセラとならんで定評のあるアイ・オー・データ機器ですが、こんな素晴らしいハードウェアを開発していたんですね。海外で地デジが観たい人、既存のリモート視聴が遅いインターネットのせいで安定して観られず困っている人はぜひ試してみてください。

ちなみにアイ・オー・データでチューナーも揃える場合は、

と購入するのがよさそうです。 HVTR-BCTX3 はチューナーのみでハードディスクはありませんが、録画先として HVL-RS を指定できます。ダビングの手間が一段省けますね。ちなみに HVTR-BCTX3 だけでもリモート視聴できますが、その場合は 90 日制限ありです。そう、チューナーなので、 B-CAS の呪縛で NexTV-F ベースなんですね。

そしてこの3台を運用するとすると、

  1. 実家で HVTR-BTX3 をセットアップ
  2. 実家で HVTR-BTX3 がアプリでリモート録画予約できるよう設定
  3. 実家で HVL-RS 1台目をセットアップ
  4. 実家で HVTR-BTX3 の録画先を HVL-RS 1台目に設定
  5. 実家で HVL-RS 2台目をセットアップ
  6. 実家で HVL-RS 2台目を1台目のリモートダビング先としてペアリング
  7. HVL-RS 2台目を海外に持って帰る

という流れになるかと思います。もちろんチューナーは HVTR-BTX3 でなくても DTCP-IP 対応のブルーレイレコーダーやセットトップボックスでもいいです。 HVL-RS へのダビングに対応した動作確認済み機器はここで確認できます。

RECBOX RS・LSシリーズ 動作確認済み機器一覧

ちなみに HVL-RS にはダメな部分もいくつかありそうです。ブログ記事などを読むと、

  • ファンがうるさい
  • リモートダビングはファイル移動に6時間以上かかると中止
  • 説明書が不親切
  • アプリが使いにくい(日本企業あるある)

等のコメントが見受けられます。

ちなみにアイ・オー・データはテレビ視聴・録画関連製品がいくつかありますが、ざっと比較するとこんな感じです。

HVTR-BCTX3 GV-NTX1A HVL-RS HVL-LS
種類 チューナー チューナー NAS NAS
録画機能 あり あり
HDMI あり
ハードディスク あり あり
ダビング・ムーブ DTCP-IP DTCP-IP DTCP-IP DTCP-IP
LAN 内視聴 DTCP-IP DTCP-IP DTCP-IP DTCP-IP
リモート視聴 NexTV-F NexTV-F DTCP+
リモートダビング DTCP+

ちょっと古い機種が載ってますが、こんな特集ページもありました。素敵です。

海外で日本の好きなテレビ番組を見よう。

もっと早く気づけばよかった。

現状 NexTV-F ベースのリモート視聴は、 90 日の制限があるので海外在住の人間にとって非常に使いづらい機能になっています。ここであえて DTCP+ に光をあて、海外在住者でも安定的に地デジでの録画番組視聴ができる製品を開発したアイ・オー・データ機器に改めて拍手を送りたいです。

4. ST-3400 / ST-4500

こっちは難易度がものすごく高いですが、地デジのリアルタイム視聴もできます。

ひかり TV
トリプルチューナー(4K対応)モデル
ST-3400 / ST-4500

ひかり TV は NTT グループが開発したマルチキャスト (IPv6 MLD) を利用した動画配信サービスです。そして日本初かつ唯一地デジのインターネット同時配信を行なっています。そして適当なレイヤー2 VPN を使ってチューナーに IPv6 MLD を届けることで、海外でチューナーが動作するようになります。 例えばレイヤー2 VPN に L2TPv3 を使うとすると、地デジが

実家の L2TPv3 対応ルーター

海外の自宅の L2TPv3 対応ルーター

海外の自宅の ST-3400

と届くことになります。大画面でリアルタイムに地デジが観られるし、チューナーに USB HDD ハードディスクを接続すれば録画もできます。そして専用アプリやおなじみ DiXiM Play を使って自宅内の複数台のテレビで視聴したり、スマホで視聴したりできます。スマホでのリモート視聴はペアリング 90 日制限がありますが、チューナーが自宅にあるので関係ないです。ただ実家と自宅をレイヤー2で一体化するとかは VPN 界では非推奨です。ちゃんと VLAN 分けてください。

この場合必要になるのが、

  • 実家と海外の自宅にそこそこ高速なインターネット
  • 実家と海外の自宅にそこそこのルーター
  • もしくは実家と海外に SoftEther
  • レイヤー2 VPN を設定できるスキル
  • ひかり TV に加入できるプロバイダ ( フレッツか Nuro )

等々です。圧倒的にハードルが高いので、やはり HVL-RS がおすすめです。リアルタイム視聴はあきらめましょう。というか海外は時差があるのでリアルタイム視聴しづらいです・・。

難しくても挑戦したい人は、下記の記事を見てみてください。

5. 番外編

こちらはちょっと古いですが、ローカルにデータはなくリモート視聴オンリーだけどペアリングの期限がない視聴方法です。

ピクセラ PIX-BR320
ピクセラ PIX-BR321

テレビ視聴製品の雄、ピクセラのチューナーです。こちらはレイヤー2 VPN を使えば地デジのリアルタイム視聴や録画視聴ができます。日本の PIX-BR320 → 海外の Apple TV でリアルタイム視聴もできます。ただ古いので、もう大抵のアプリが動かなくなってきています。

ピクセラ SB-TV04-WRIP

こちらはソフトバンクがピクセラと開発したチューナーで、発売当時は iPhone で地デジがリアルタイムでリモート視聴できる世界初の商品として話題になりました。こちらはペアリングが必要ですが、一度ペアリングすれば期限がありません。そのかわり iPhone の専用アプリ以外での視聴はできません。こちらも古いので、やはりもうアプリが動かなくなってきています。 NexTV-F 制定前に独自開発でリモート視聴のすべて(つまり NAT 越えから DDNS や複雑怪奇な利権団体での認可まで)を成し遂げたピクセラの技術力と心意気にただただ感服するばかりです。たぶん昔は STUN / TURN サービスとか無かったですよね・・。

6. おわりに

日本は世界的に見ても放送波による番組コンテンツが異常に充実している稀有な国です。しかしその視聴者はどんどん減っています。さまざまな規制で使いにくい NexTV-F リモート視聴は本当に残念ですが、ちゃんと海外で長期的に録画コンテンツが使えるハードウェアがあるのは光明ですね。もう1度地デジを観てみようではありませんか!


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